竹中大工道具館研究紀要
Online ISSN : 2436-1453
Print ISSN : 0915-3683
刃物の鋼、地金に関する調査
沖本 弘
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1990 年 2 巻 p. 8-22

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抄録

このたび、変わり鍛冶で知られる左久作氏より手持ちの材料を数種類提供していただいたので、大工道具の特質調査のー側面として化学成分等の品質調査を実施した。分析等は㈱コベルコ科研に依頼して実施した。 鋼の硬度(強度)を制御する元素はC(炭素)であるが、今回の試料はC=1 .13~ 1.49%であった。硬い材料は一般にもろいので、これに粘りをもたすためによく合金元素(Ni:ニッケル、Cr:クロム、W:タングステン)を添加する場合がある。試料のW6、W4には明らかに添加されている。 刃物はできるだけ薄い鋼に軟らかい地金をつけたものが上等とされている。今回の地金もCが低く0.0093~0.081%と鋼の含有率に対して2桁も小さい値を示している。一方、地金に特長的なことは鋼に反して、不純元素が著しく多く、したがって非金属介在物も多いという結果を示した。 左久作氏の提供の外来材料の化学成分を中心に調べたが、このように特性の異なった材料の鍛接条件を鍛冶師達はどのように見出し、会得したか興味あることである。

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© 1990 公益財団法人竹中大工道具館
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