抄録
本稿では、近年諸外国で活発に研究・実践されている「困難な歴史(Difficult Histories)」に着目し、「困難な歴史」が現代の民主主義社会において重要な課題であり、道徳的な葛藤を個人及び社会レベルで取り上げることを可能にする教材となることを主張した。そのために、「困難な歴史」とは何か、なぜ重要なのかについて述べた上で、「困難な歴史」の教育について理論的に論じたキャンベル・スクリブナー(Campbell Scribner)の論考と、紛争後社会における歴史教育の立場から「困難な歴史」実践を検討したアラン・マッカリー(Alan McCully)の論考を取り上げた。これらの論考の考察を通して、「困難な歴史」をめぐる教育とはどのようなものかを検討することで、道徳科において現代的な課題として「困難な歴史」を教える意義と方法について考察した。