応用生態工学
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事例研究
都市近郊域におけるコゲラの生息環境の評価
今村 史子城野 裕介徳江 義宏
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2012 年 15 巻 1 号 p. 91-99

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抄録
生態系の上位種であるコゲラについて,都市近郊域を対象として広域スケールの環境要因と各樹林地の植生構造等の詳細なスケールの環境要因に基づいて,生息環境の評価を行った.愛知県の逢妻男川の周辺の規模の異なる 41 地点の樹林地を対象に,コゲラの生息状況を把握する調査を行い,また各樹林地内の代表的な箇所にコドラートを設定して群落高,階層別の植被率,枯死木等を把握する生息環境の調査を行った.さらに空中写真をもとにして,周辺の樹林地の分布状況や経過年数について把握した.各樹林地においてコゲラの生息状況を調査した結果,コゲラはほぼ 1 年中生息が出現したこと,また 14 地点において生息が確認され,特に社寺林等の成熟した樹林地で生息が確認される傾向にあった.コゲラの生息を説明する環境要因を検討するため,各樹林地を単位に,コゲラの生息の有無を目的変数,植生構造や周辺の樹林地率を説明変数に設定してロジスティック回帰分析を行った.AIC とモデルの予測正解率を基準として,変数の取捨選択を行ったところ,コゲラは樹林地面積,樹高 8 m 以上の階層の植被率,周辺 300 m の樹林地率が高い樹林地を選好すること,また群落の最上層の竹林の植被率が高くなると生息に負の影響を与えているとする式が得られた.モデル式による予測からは,コゲラの現状の生息の有無が 97.6 % 説明されており,精度の高い式が得られた.結論として,コゲラは樹林性の鳥類であることから面積が大きくかつ樹高が高い樹林地が重要となること,また竹林は餌資源,営巣,飛翔等の観点から生息に不適である可能性が示唆されたということ,周辺 300 m という日常的に飛翔が可能な空間において樹林地率が高くなることが重要であることを指摘した.
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© 2012 応用生態工学会
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