グリーンインフラストラクチャー(GI)は生態系を計画的に人間社会に組み込み,生態系が有する様々な機能を活用するというアイディアで,自然を基盤とした社会課題の解決(Nature-based Solutions: NbS)に含められることも多い.近年では政府による支援体制も拡充しつつあり,各地で GI 推進が積極化している.しかし,GI の概念は極めて広く,行政等が GI の具体的な取り組みを検討する際の情報が不足しているという指摘もある.GI の導入を検討する際には,少なくとも対象地に存在する生態系および法制度等,人間社会における制約をともに考慮する必要がある.本研究は,対象地に存在する生態系と人間社会における制約の両方に関係する要因である土地利用計画に注目し,自治体において導入しやすい GI タイプを提示することを試みた.国土利用計画法に基づく土地利用基本計画を利用し,全国 1,917 の市区町村について,計画上の土地区分面積を非階層クラスター分析によって類型化した.その結果,土地区分について森林,都市開発地,都市緑地,農地という 4 区分を用いると 3 クラスに,森林を除いた 3 区分を用いると 5 クラスに分かれた.クラスは基本的に積極的に都市開発がなされるクラス,都市緑地および農業地域を多く含むクラス,森林および農地が大部分を占めるクラスに大別され,国土交通省発行のグリーンインフラ実践ガイドにおけるエリア分け「都市部」,「郊外部」,「農山漁村部」とおおむね一致し,推進しやすい GI タイプをある程度反映すると考えられた.クラス分け結果を地図化すると,同じクラスは地理的にまとまっている傾向があり,GI 推進において近接する市区町村の協同は有効と考えられた.これらの結果から,土地利用基本計画に基づく計画上の土地利用は,基礎自治体において推進しやすい GI を検討する材料として有効であると考えられた.