2018 年 37 巻 37 号 p. 138-144
小学校社会科の授業で扱われる基本的人権の尊重を児童に主体的に学ばせるための試みとして,J.ロールズが提唱した「無知のベール」を用いることの効果を検証した。青森県内の小学6年生に,経済的公正を勘案させる教材を用いて,4つの立場(会社社長,サラリーマン,大学生,失業者)でロール・プレイングをさせた。プレイでは,税制や年金制度について意見を述べ,政策判断をするよう指示した。その後に,「無知のベール」を被り自分の立場が分からない状況で,再び,同様の政策判断をさせた。その結果,「無知のベール」を用いることによって,児童の判断がより基本的人権を重視したものに変化することが確認された。