Edaphologia
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自然栽培と慣行栽培のリンゴ園の落葉の違いがヒトツモンミミズ(Metaphire hilgendorfi)の生存と繁殖に与える影響-飼育実験による検証-
鈴木 理希也池田 紘士杉山 修一金田 哲
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2020 年 106 巻 p. 1-10

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抄録

 慣行栽培における化学肥料の施肥や農薬散布は,土壌動物の群集組成に大きく影響を与える.近年の研究により,農薬や化学肥料を用いない自然栽培のリンゴ園では,隣接する慣行栽培のリンゴ園に比べてフトミミズ科が優占することが明らかにされた.慣行栽培と自然栽培では下草の組成が大きく異なっており,それに対応して落葉の組成も大きく異なり,自然栽培では双子葉植物と単子葉植物がともに生えているのに対し,慣行栽培では双子葉植物はわずかしかなく,大半は単子葉植物である.本研究では,落葉の種類がフトミミズ科の種の成長や繁殖に与える影響を調べることで,フトミミズ科が自然栽培で優占する要因を明らかにすることを目的として飼育実験を行った.フトミミズ 科の代表種であるヒトツモンミミズ(Metaphire hilgendorfi (Michaelsen, 1892)) を用いて, 飼育に用いる下草の落葉の種類を「慣行栽培の単子葉」,「自然栽培の単子葉」,「自然栽培の双子葉」,「落葉なし」の4 つのグループに分け,12 週間飼育した.その結果,ミミズの体重は9–12 週目において,「慣行栽培の単子葉」と「自然栽培の双子葉」で,他のグループに比べて有意に大きかった.また,ミミズの卵包のふ化率は「慣行栽培の単子葉」が自然栽培の2 つのグループに比べて低かった.生存個体数や卵包数では落葉の種類による違いはなかった.これらの実験結果から,「自然栽培の双子葉」の落葉がフトミミズ科にとって適していると考えられる.したがって,フトミミズ科が自然栽培のリンゴ園にのみ生息しているのは双子葉の落葉を利用できるためであることが一要因だと考えられる.

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© 2020 日本土壌動物学会
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