教育社会学研究
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論稿
高学歴化・経済変動と学歴:
上層ホワイトカラー入職に対する学歴効果の変容
豊永 耕平
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2018 年 103 巻 p. 47-68

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抄録

 本稿では,大卒労働者が従事することが期待されてきた上層ホワイトカラー階層への入職に学歴が与える影響が,1990年代以降の高学歴化・経済変動によって変化したのかどうかを検証した。①初職での専門職入職と,②世代内移動による管理職入職の2つの入職経路に分けた分析から,男性は高学歴化が進んだ1995年以降,女性は第2次男女雇用機会均等法が施行された1999年以降の変化を議論した。
 社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)の1995年・2005年・2015年調査の合併データによる分析の結果,以下の3点が示された。第一に,大卒労働者が増加した1995年以降にも依然として高等教育学歴は専門職入職と強く結びついていた。入試選抜度の低い私立大学出身男性で専門職になりにくくなる不利が増大しているわけではなく,むしろ入試選抜度の高い私立大学出身男性ではさらに専門職になりやすくなっていた。第二に,1995年以降には大卒男性では管理職入職が困難化していた。特に入試選抜度の低い私立大学出身男性ほど管理職になりにくくなる不利が増大しており,学歴インフレは専門職入職ではなく管理職入職では生じていることが示唆された。第三に,女性については第2 次均等法が施行された1999年以降に学歴間格差が拡大していた。1999年以降の変化は大卒女性ほど大きく,大卒女性,特に入試選抜度の高い大学出身女性が管理職になりやすくなっていた。

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