教育社会学研究
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特集
大学教授職研究は何をなしうるか:
成果と展望
湯川 やよい坂無 淳村澤 昌崇
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2019 年 104 巻 p. 81-104

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抄録

 大学教授職研究は,タブー視されがちな大学教員世界に切り込む挑戦的領域であり,既存研究の貢献は大きい。しかしその成熟ゆえに,近年の大学内外の変化を踏まえた「専門職の社会学」研究としての意義づけの再確認と,方法論的展開の促進が不可欠である。
 この問題意識のもと,本稿では,⑴ミクロレベルでの相互作用の研究,⑵男女共同参画をめぐる政策研究,の二つのレビューを行った。その結果,⑴については,大学教授職研究での相互作用研究における「批判的な社会学」の視点と質的アプローチの不足を指摘しつつ,大学教員を複数の社会学的変数から成る多様性ある集団として捉えなおすことを提案した。⑵のマクロレベルについては,男女共同参画に関する大学教授職研究からの批判的検討と知見の提供の不足を指摘し,それを乗り越える分析の可能性を論じた。
 最後に,こうした専門研究コミュニティ外部の問題意識との接続を通じ,建設的批判や対話を積み重ねることで,大学教授職研究の裾野を広げることの必要性を提言した。

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© 2019 日本教育社会学会
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