教育社会学研究
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論稿
「社会化」過程の再特定化
―幼稚園年少級におけるルーティン活動の相互行為分析―
粕谷 圭佑
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2019 年 105 巻 p. 115-135

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抄録

 本稿は,子どもが「なじんでいく」「まとまっていく」といった経験的事実を,「社会化」研究がいかにして捉えることができるのかを検討し,幼稚園に入園したばかりの園児がルーティン的活動に出会う「はじめの5日間」の相互行為がどのように組織化されているかを明らかにする。社会化は長きにわたって教育社会学のテーマであり続けてきたが,そこには,社会化という枠組みで現象を捉えることの問題と,社会化という枠組みを解除しようとしたがゆえの見落とし,という二重の問題性がある。こうした問題に対し,本稿は「社会化」概念を,子どもが「できるようになる」「なじむ」「まとまる」といった日常的な記述の上に重ねられた「二階の概念」として捉え,「社会化」過程の再特定化を試みる。この方針のもと,幼稚園年少級に入園して間もない園児たちが,幼稚園で園児がまとまりある活動を構成していく過程における相互行為がどのように組織化されているのかを分析した。分析の結果,保育者と園児の相互交渉のなかで,①前景化する課題が変化すること,②園児らの「エラー」と捉えられる行動に相互行為系列上の合理性があること,③場面の状況によりそれまで続けられた課題が後景化すること,が明らかになった。こうした知見から,本稿は,教育者と被教育者の交渉過程と子どもの相互行為能力に目を向ける必要性と,実践に拓かれた「社会化」研究の可能性を示唆した。

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© 2019 日本教育社会学会
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