教育社会学研究
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特集
コロナ禍の学校臨時休業によるラーニング・ロスの実証的検討
―令和3年度文部科学省全国学力・学習状況調査の分析から―
中西 啓喜
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2023 年 112 巻 p. 77-96

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抄録

 Covid-19による学校臨時休業は,子ども達の学力にどのような影響を与えたのだろうか。学校臨時休業によって,学校に通えば獲得されたはずのスキルが失われることをラーニング・ロスと呼ぶ。本稿では,令和3年度に実施された全国学力・学習状況調査の個票データの分析から,学校臨時休業が学力に及ぼすラーニング・ロスについて実証的に分析した。

 日本における既存の研究では,学校の社会経済的背景(Socio-Economic Status:SES),臨時休業期間の長さ,学力・正答率の三者間には,学校SESが低い学校ほど平均正答率が低い傾向が指摘されている。しかし,既存の研究が学校を単位とした分析に留まっている。

 本稿では,児童生徒・学校・都道府県の3レベル階層的データを分析し,得られた知見は次の通りである。第一に,学校臨時休業が学力に与える影響については,小学6年生では負の影響が示唆され,中学3年生では観測されなかった。第二に,小6を対象として,臨時休業期間(学校レベル要因)と児童SES(児童レベル要因)のクロスレベル交互作用効果を検討した結果,概ね臨時休業が60日以上で児童の高SESと低SESとの間には交互作用効果が観測された。低学年かつ低SESの子についてラーニング・ロスの傾向が見られたことは海外の選考研究と整合的であった。

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