抄録
本研究では,「地方/中央都市部の進学校に通う生徒の学習・進学意欲がいかにして維持されているのか」について,そのメカニズムの一端を明らかにすることを目的とし,①生徒が置かれている学習環境に差異があるなかで,それぞれの生徒の学習・進学意欲はどのようにして維持されているのか,②それぞれの生徒の学習・進学意欲には,いかなる達成動機(志向性)が作用しているのかという2点に着目し,分析を行った。
分析の結果,地方の生徒については,学習塾等の教育機会が中央都市部と比べて乏しい学習環境にあるなかで,逆に,そのような環境に置かれているからこそ, 入学した学校の教師との間の信頼関係が強くなることがわかった。さらに,地方の生徒に関しては,教師によって強調される「社会的な自己実現」といった志向性が,学習・進学意欲に作用していることが明らかになった。
一方で,中央都市部の生徒については,周囲に学習塾や大学等の教育機会が多くあることから,学校の教師の積極的な介入が無くとも学習・進学意欲が維持されうる状況にあることがわかった。また,その際,学習・進学意欲に対しては,地位達成志向が強く作用していることが明らかになった。
本研究を通じて,階層・高校ランク上位グループの学習・進学意欲がいかにして維持されているのか,地方/中央都市部という区分において,その説明図式には質的な差異が見られることを明らかにすることができた。