教育社会学研究
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論稿
現代高校生の教育期待とジェンダー
──高校タイプと教育段階の相互作用を中心に──
白川 俊之
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キーワード: 教育期待, ジェンダー, PISA
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2011 年 89 巻 p. 49-69

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抄録

 現代高校生の教育期待の分化要因を検討する。日本で教育達成ないし教育期待を分析した先行研究では,女性の進路の決定に関して男性ほど学校タイプや成績が重要な役割を果たしていないこと,しかしそうした男女の差異は次第に解消に向かい男女いずれにとっても成績や学校タイプにもとづく進路の分化が中心となってきていることが報告されている。こうした男女の共通化をもたらす背後要因として,先行研究は教育拡大による女性の4年制大学への進出を指摘する。本稿は進路規定構造の変化の要因をさらに踏み込んで考察し,進学校にかよう女性の進路の変更(短大→大学)と,大学進学に有利な上位校への女性の進出とが,女性の進路分化における業績原理の浸透を帰結した具体的な仕組みである可能性を示す。そして,その結果として現代高校生の教育期待の分化構造において,高校/短大以上の区分以上に短大以下/大学の区分で男女共通の構造が見出されるという予測を導出する。
 2003年の PISA を用いたデータ分析から,学校タイプが教育期待を規定する効果は男性に比べて女性で小さいものの,そうした性別特殊性が見られるのは短大を含めた高等教育への進学期待に限られ,大学進学への期待に目をやると男女共通の傾向があらわれることが明らかとなる。また出身背景が学校タイプを介さずに直接,教育期待を規定する働きは女性でやや大きいものの,効果の基幹部は男女に共通している。

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© 2011 日本教育社会学会
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