教育社会学研究
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論稿
「大学立地政策」の「終焉」の影響に関する政策評価的研究
──「高等教育計画」での特定地域における新増設の制限に注目して──
上山 浩次郎
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2012 年 91 巻 p. 95-116

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抄録

 本稿では,「大学立地政策」の「終焉」が,大学進学機会の地域間格差にどのような影響を及ぼしたのか明らかにする。
 先行研究においては,その「終焉」は大学進学機会の大都市部への集中と地域間格差の拡大をもたらしていないと示唆されている。だが,その「終焉」の独自の影響力を捉えきれていない等の限界がある。
 本稿では,「インパクト評価」に依拠し,実測値と予測値の差からその「終焉」の影響を評価する。具体的には,「高等教育計画」での特定地域における新増設の制限に注目し,この制限の撤廃が,(1)「規制地域」(を含む地域ブロック)での大学進学機会の動向に影響を及ぼしたのか,さらに(2)この動向が全国レベルの地域間格差にどのような影響を及ぼしたのかを検討した。
 分析の結果,①大学学部定員数では,「規制地域」で予測以上の定員増がみられ,さらに全国レベルの地域間格差も予測以上に拡大した結果,格差の趨勢が縮小から拡大へと反転した。②大学収容力でも,「規制地域」を含む地域ブロックで予測以上に値が上昇し,地域間格差も予測以上に拡大した。結果的に,現在の格差の大きさは,「大学立地政策」開始直後以上になっている。③大学進学率も,「規制地域」を含む地域ブロックでの値の上昇と全国レベルでの地域間格差の拡大とが予測以上に進行した。
 これらから,「大学立地政策」の「終焉」は,大学進学機会の地域間格差の拡大をもたらしたと判断できる。

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© 2012 日本教育社会学会
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