教育社会学研究
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論稿
授業会話における発言順番の配分と取得
──「一斉発話」と「挙手」を含んだ会話の検討──
森 一平
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2014 年 94 巻 p. 153-172

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抄録

 本稿の目的は,授業会話における順番交替組織の一側面を明らかにすることである。小学校の授業会話においては,教師から児童たちへと発言の順番が移行するさい,主に一斉発話と挙手によってこれが成し遂げられる。しかし両者は,ともに同じく教師の質問によって児童たちに要求される。では,授業会話の参与者たちはいかにしてこの2種類の要求を区別し,またいかにしてそれに応えているのだろうか。本稿はこの問いを解くことを通して,上記の目的を果たそうとするものである。
 分析の結果明らかになったのは次のことである。第1に教師は,基本的にはsK+質問と sK+/K-質問という2種類の質問を使い分けることによって,一斉発話と挙手の要求をそれぞれ区別していた。第2に児童たちは,事前の発言をきちんと聞いていたことを示しうるような適切なタイミングで挙手を開始していた。第3に,教師の要求に対して児童たちが誤った,あるいは分散した反応を示してしまった場合には,これを事後的に適切な反応へと方向づける付加的な技法が用いられていた。
 一斉発話と挙手は授業会話において,その限られた発言の機会を児童たちへとなるべく公平に行き渡るよう分配するための,あるいは授業全体をより効果的なしかたで組織するための,有益な道具として用いることができる。本稿の知見は,この2つの道具を区別し使い分けるための,基礎的な技法を明らかにしたものである。

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© 2014 日本教育社会学会
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