2015 年 96 巻 p. 131-152
本稿では,排除の危機にある子どもたちを学校がいかに支え,育てようとしているのかを教育実践のレベルで論じていく。日本の学校教育は,総じて子どもたちの社会経済文化的背景から目をそらす傾向にある。しかし,関西の同和教育・人権教育では,排除の危機にある子どもたちを「特別扱い」し,かれらを中心にした集団づくり・仲間づくりと学力保障によって排除に対抗してきた。さらに,社会を生き抜くための実践的なスキルや知識の学習や社会を変えていくための学習が行われてきた。
こうした排除に対抗する学校を,市民性教育によって概念化してみたい。市民性教育では,学校から排除されないために,共感的な学級集団(人権が大切にされた教育)が,社会から排除されないために「学力」(人権としての教育)と社会を生き抜くスキルや知識(人権についての教育)が構想される。そして,社会の方を変えていくためには,一人ひとりの小さな「声」を社会に届ける活動が求められる(人権をめざす教育)。その時,教師の役割は,パターナリズムを超え,子どもやマイノリティをはじめとした市民とともに学校を創り,社会を変えていく契機をつくっていくものになる。