教育社会学研究
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英米のコミュニティ・スクールと社会的包摂の可能性
ハヤシザキ カズヒコ
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2015 年 96 巻 p. 153-173

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抄録

 本稿は,学校エスノグラフィの手法をもちいながら,フルサービス・コミュニティ・スクールや拡張学校の特徴を,米,イングランド,スコットランドの比較からあきらかにしようとするものである。これらの3カ国では,財団の支援や国の政策によって,貧困削減や社会的包摂をめざす学校におおきな投資をしている。そして学校がマネジメントを拡大したり,あるいは,チャリティと協力したりして,子ども・家庭・コミュニティに多様なサービスを提供している。この貧困削減をめざすコミュニティ・スクールは90年代の米国のうごきが今世紀になって世界各国にひろまったものであるが,イングランド・スコットランドではそれが国全体へとひろげられた。サービスの一部には日本になじみのものもあるが,歯科医療,警察常駐,ギャング離脱など米や英に独特のものもある。さらに,親やコミュニティにたいするサービスとして,成人学習や親のエンパワメントがあり,本稿では3国3校の事例をつうじて,成人学習の内容やエンパワメントの手法をあきらかにしている。これらのコミュニティ・スクールは社会的包摂につながるあらゆるニーズにこたえようとするものである。貧困そのものをなくしたり,社会の構造自体を変革したりするものではないものの,貧困の帰結をかえて人びとの人生を変革することがあり,まなぶべき点はおおい。

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© 2015 日本教育社会学会
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