教育社会学研究
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論稿
読解リテラシーの社会経済的格差
―PISA2009のデータを用いた分析―
鳶島 修治
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2016 年 98 巻 p. 219-239

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抄録

 本稿では,経済協力開発機構(OECD)が2009年に実施した国際学力調査PISA(Programme for International Student Assessment)の日本調査データを用いて,高校1年生の「読解リテラシー」に対する出身階層の影響について検討した。PISAの読解リテラシーを構成する「情報へのアクセス・取り出し」,「テキストの統合・解釈」,「テキストの熟考・評価」という3つの側面を区別し,これら3つの側面の得点が個人(生徒)にネストされた形の階層的データをもとにマルチレベル分析を行った結果,いずれの側面の得点に対しても出身階層が正の効果をもっていることが確認された。また,国語科で従来から重要視されてきた「読解力」に近い性格をもつ「情報へのアクセス・取り出し」に比べて,「テキストの統合・解釈」や「テキストの熟考・評価」の得点に対する出身階層の効果は相対的に大きいという知見が得られた。読解リテラシーに対する出身階層の影響を説明するため,「文化資本」の一種とみなされる生徒の読書習慣(学校外での趣味としての読書時間)に着目して媒介関係の検討を行ったところ,読解リテラシーに対する出身階層の効果の約10~12%が読書時間によって媒介されていた。ただし,読解リテラシーの3つの側面の得点に対する読書時間の効果はほぼ同程度であり,「テキストの統合・解釈」や「テキストの熟考・評価」の側面において出身階層の効果が相対的に大きい傾向は読書時間という要因によっては説明されなかった。

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© 2016 日本教育社会学会
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