抄録
本研究では,管理栄養士・栄養士が,消費者に必要と考える食の安全の知識を調査することを目的とした。全国の管理栄養士・栄養士30名に協力を依頼し,22名(73.3%)から同意が得られた。質的調査法であるデルファイ法を用いて,3回にわたる質問紙調査を実施した。調査対象者は,食の安全に関する様々な項目について,優先順位をつけた。3回の調査の回収率は,第1回調査から順に100%(22人),95.5%(21人),95.5%(21人)であった。3回の調査を経て,最終的には35項目が得点し,上位10項目のうち第1,4,10位は「残留農薬」に関する項目であった。上位10項目の選出理由では「消費者」の「内面」および「行動」を中心にして,「社会の抱える課題」「周囲の人」「専門家」「生産者」との関連がみられた。
管理栄養士・栄養士は,消費者の感情や行動に影響を及ぼす事項が食の安全教育に必要だと考えている。またその理由には,消費者自身の内面や行動,および社会の課題が関係していることが示唆された。今後は,専門家あるいは消費者を対象としたさらなる調査を行い,消費者にとって必要な食の安全に関する知識を確認することが必要である。
(オンラインのみ掲載)