2010 年 68 巻 2 号 p. 131-140
本研究の目的は,咀嚼能力が異なることによって,高齢者の菓子の選択や,菓子の食感(かたさや付着性)に違いが出るかどうかを調べることである。我々は,週に3回以上菓子を食べる60-80代の男性90名と女性94名を対象に,インターネットにより調査を実施した。調査対象者には,(1)歯の状態,(2)咀嚼能力,(3)菓子の選択,および(4)好ましい食感に関して質問した。咀嚼能力により調査対象者を4群に分け,χ2検定およびコクラン・アーミテージ検定にて解析した。
咀嚼能力と年齢や歯の状態には関連性が見られた。咀嚼機能の低下した群ほど食感(かたさや付着性)を気にしている人が多かった。咀嚼能力の低い群ほど菓子の中で比較的かたい米菓やかりんとうを日常的に摂取している人が少なく,やわらかい食感を求めていた。
咀嚼能力にかかわらず,口腔内で付着しにくく,口どけの良い食感が求められており,この傾向は,特に咀嚼能力の低い群に強く見られた。
以上より,咀嚼能力と菓子の選択や菓子の食感に対する要望には関連性が見られた。咀嚼機能の低下した高齢者には,やわらかく,口腔内に付着しにくい食感が好ましいことが示唆された。
(オンラインのみ掲載)