栄養学雑誌
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原著
幼若および成熟ラットの糖質エネルギー比率と窒素出納
森下 紗帆高瀬 幸子
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2011 年 69 巻 6 号 p. 312-317

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抄録

【目的】日本人の食事内容は高糖質・低脂肪食から低糖質・高脂肪食へと移行している傾向にある。肥満者や糖尿病の罹患率増加と栄養素摂取との関係について多くの報告があるが,ヒトの日常食に近似した糖質比率を総合的に検討した報告は少ない。そこで本研究ではラットを用いて食事中の適正な糖質エネルギー比率を検討した。
【方法】糖質エネルギー比率と窒素出納の関係を幼若ラットおよび成熟ラットを10日間飼育し検討した。飼料はたんぱく質あるいは脂肪比率をそれぞれ一定にし,糖質エネルギー比率を増減 (30・50・60・70%) した。
【結果】食事中たんぱく質が適当量 (20%カゼイン,飼料P) であればラットの成長は低糖質食でも高糖質食と同様であった。幼若ラットでは飼料Pの低糖質食群 (糖質エネルギー比率30%・50%,αコーンスターチ) で尿中窒素排泄量が減少し,見かけの体内窒素保留量が増加した。食事中脂肪が一定 (9%コーンオイル,飼料F) の場合,たんぱく質摂取量の増加に比例して尿中窒素排泄量は増加した。低糖質食による見かけの体内窒素保留量の増加が推察された。飼料Pと飼料Fのいずれも各群間の差異は成熟ラットに比べ幼若ラットで顕著であった。
【結論】糖質エネルギー比率50%以下の低糖質・高脂肪食摂取は糖質およびたんぱく質代謝に影響を及ぼし,尿中窒素排泄量を減少させた。これは摂取たんぱく質から代謝されたアミノ酸由来の糖新生が亢進したためであると推察された。

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© 2011 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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