栄養学雑誌
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果実ポリフェノール量および抗酸化活性への電子レンジ加熱,湯煮加熱(ブランチング)の影響
大池 奈津希川俣 幸一
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2012 年 70 巻 3 号 p. 207-212

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抄録

【目的】野菜類と比べて果実ポリフェノールの抗酸化活性への加熱処理の影響に関する報告は少ないため,果実に含まれる総ポリフェノール量および抗酸化活性への加熱処理の影響について明らかにする目的で行った。
【方法】実験材料は,主に長野県南部地域で栽培されている果実8種類(リンゴ,梨,白桃,黄桃,ネクタリン,スモモ,プルーン,ブドウ)を用いた。果皮付きの果実を均一に3等分し,生果実用,電子レンジ(沸騰確認後1分)加熱用,湯煮(2分)加熱用として以下の測定を行った。すなわち,ポリフェノールの抽出溶媒は1%HCl-MeOHを使用した。果実のポリフェノール量はフォーリンチオカルト法,抗酸化活性の測定はα, α-diphenyl-β-picrylhydrazyl(DPPH)法を実施した。還元型ビタミンCはHPLC法により測定した。
【結果】電子レンジ加熱または湯煮加熱により,大部分の果実では総ポリフェノール量に変化がみられなかったが,白桃湯煮加熱においてのみ有意な低下が確認された。また電子レンジ加熱または湯煮加熱において,大部分の果実の抗酸化活性に変化はみられなかったが,白桃湯煮加熱,リンゴの電子レンジ加熱において有意な低下が確認された。これらの全てのサンプル液内に還元型ビタミンC量は殆ど含まれていなかったことから,今回の結果がポリフェノール量の減少または抗酸化活性の質の低下によって導かれたものである可能性が示唆された。
【結論】8種類の果実についてブランチング程度の短時間の加熱処理を実施したところ,白桃などの一部の果実において有意な抗酸化活性の低下が見られた。その原因として,還元型ビタミンCでなくポリフェノールの茹で汁への流出による可能性が大きいことが示唆された。

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© 2012 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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