社会の中核を成す勤労世代の生活習慣病の予防対策は,短期的な社会・経済に及ぼす影響だけではなく,中・長期的にわが国の医療や保険システムにも関わる問題であり,重要な課題である。生活習慣病の予防を目的とした栄養疫学では,対象となる個人や集団の栄養・食生活を規定する諸状況と身体状況を可能な限り正確にとらえ,客観的に評価することが必要である。このため,調査の信頼性や妥当性を高めるための研究デザインや精度管理を徹底することが求められる。
勤労男性においても日常の生活習慣の状況は栄養・食生活と関連深い。例えば多量に飲酒する習慣を持つ集団では,非飲酒・少量飲酒集団に比べ,見かけのエネルギー摂取量は増加するものの,アルコール飲料以外から摂取する食事は減少する。このため,望ましい栄養素摂取は困難となるばかりでなく,肝機能や血圧などの臨床成績は悪化する。血圧について長期的に集団を観察すると,多量に飲酒する習慣を持つ集団は,ベースラインだけではなく,その後の血圧の上昇度割合も高くなっていた。
職域に勤務する成人に対する生活習慣病の予防のための対策は,職域の状況や個別の興味・理解状況に応じて,適切な栄養教育媒体を選択し,その内容を工夫するとともに,一定期間での評価と改善が求められる。また,ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの内容を連動させることも望まれる。