栄養学雑誌
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原著
男子中学生のうま味感受性とだしの風味の評価との関連
神田 知子丸山 智美
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2015 年 73 巻 3 号 p. 87-99

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抄録

【目的】学齢期男子の味覚の現状を明らかにするために,男子中学生のうま味感受性とだしの風味の評価との関連について検討した。
【方法】男子中学生174人を解析対象とした。うま味(グルタミン酸ナトリウムに塩化ナトリウムを加えた溶液)の味覚識別能と3種類のだし(かつおだしと昆布だし,および2種類を混ぜ合わせたかつお昆布だし)の風味(うま味,香り,生臭み,しょっぱさ,酸っぱさ)の評価を調査した。うま味の味覚識別能を有する者を「うま味感受性高群」,それ以外を「うま味感受性低群」に分類し,両群の官能評価の評点を比較した。さらに異なるだしに対する評点をカテゴリー化した変数を用い,「うま味感受性高群」と「うま味感受性低群」との比率を比較することで,うま味感受性とだしの風味の評価との関連を解析した。
【結果】「うま味感受性高群」は59人(33.9%)であり,うま味の認知閾値はグルタミン酸ナトリウムの濃度で 0.650 g/lであった。「うま味感受性高群」と「うま味感受性低群」との評点の比較では,だしの生臭みの評価のうち,かつお昆布だしで両群に有意差があり,「うま味感受性低群」でかつお昆布だしの生臭みの評点が低かった。3種類のだしについてのうま味の評価は,「うま味感受性高群」では,すべてのだしに対して75%以上の者が「うま味を感じる」と回答していたが,「うま味感受性低群」では,昆布だしの「うま味を感じる」と回答した者が58.5%と有意に少なかった。生臭みの評価は,「うま味感受性高群」では3種類のだしの生臭みの評価に有意な差を認めなかったが,「うま味感受性低群」では昆布だしを「生臭みが強い」と評価した者(41.3%)が有意に多く,かつお昆布だしを「生臭みが強い」と評価した者(13.5%)は有意に少なかった。
【結論】男子中学生のうま味感受性は,だしの風味のうち,うま味と生臭みの評価に関連する可能性が示唆された。

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© 2015 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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