2017 年 75 巻 1 号 p. 29-38
【目的】高齢者施設入居者における血清セレン(Se)濃度とSe摂取量の関係を調べ,高齢者の栄養管理を適切に行うための給食管理上の課題を明らかにすることを目的とした。
【方法】特別養護老人ホームに入居している女性9名を対象に3日間の食事調査を実施した。Seの摂取量は給食および自由摂取した食品を陰膳法にて採取し,化学分析による実測と同時に,食品成分表および「食品の微量元素含量表」を用いて計算した。また,対象者の血清Se濃度を測定し,Se摂取量との関係を調べた。
【結果】調査対象者のSe摂取量の平均値は,実測値 51 μg,計算値 94 μgで,全員が推奨量以上であった。Se摂取量は,給食の提供量と有意な正の相関を示した。対象者の血清Se濃度は平均 76 μg/lであり,Se摂取量(実測値)と有意な正の相関が認められた(r=0.70 p=0.035)。Se摂取量(実測値)に最も寄与するのは魚料理(寄与率37.9%)であり,次いで肉料理(寄与率27.6%)であった。
【結論】高齢者施設入所者の血清Se濃度は低値ではあるが,Seの栄養状態として欠乏状態にはないと予想された。また,Se摂取量は給食の提供量と関係するため,エネルギー,たんぱく質を最優先し,魚介類,肉類を主要な食品群と位置づけた食品構成表に則って献立作成をすることによってSeの不足を回避できることにつながると考えられた。