1962 年 20 巻 3 号 p. 101-107
前報に示したとおり, 魚鯨肝油ビタミンAの生物効力は試料によつて種々の値を示し, 効力の大なものは全トランス型ビタミンAに匹敵するが, なかには相対生物効力にして70%を示すものもみられた。このような異同はマレイン価から推定しえたように, 種々の条件によって生ずる異性化によると考えられ, このような異性化は合成ビタミンAについても観察された。それらの結果はしろねずみの成長試験においても認められたが, その投与量によつて差異を生ずるような傾向がみられたこと, 既往の実験値は合成Aと天然Aとの効力が投与量の高い所で比較され, 且つ差異を生じていないことから, マレイン価と生物効力の関係をたしかめ, 飼料レベルに近い投与量でのビタミンA効力の比較を行つた。又相対生物効力によつてビタミンAの効力を示す場合これは全トランス型ビタミンAの効力に対する%で表わされるので, 種々得られた値を用いて, 一般測定に用いられる吸光法による測定値との比較検討を行つた。
以上の結果より, 限界投与量においても, 非欠乏動物では合成ビタミンA油, 天然ビタミンA油のビタミンAの生長効力に差を生じないこと, 充分量の投与ではむしろ, 天然A油がまさること, マレイン価から推定した効力は, Ames らの値より10%程度大きいこと, 相対生物効力78%以上の魚肝油のビタミンA値は吸光分析値と一致することをみた。