栄養学雑誌
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振動・寒冷・光等に暴露された白鼠の代謝および心理的行動に及ぼす蛋白質の影響 (第1報)
中島 欽一
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1964 年 22 巻 1 号 p. 10-15

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抄録

1) これまでに, 単一, 異種蛋白の一定期間投与における振動など「ストレス」負荷の影響を実験したが, 高蛋白を与えると「ストレス」耐性において良い結果を得るものと思われたので, 今回は蛋白の質を検討するため「アミノ」酸組成 (蛋白価) を考慮しつつ白鼠の成長および臓器の機能への影響を研究した。また新に「ストレス」と栄養との関連を心理的観点に立つて白鼠の行動について迷路実験を行なつた。
2)「アミノ」酸組成の良い, 即ち蛋白価の高い蛋白含量の多い飼料を多量に摂取した場合は振動などの「ストレス」負荷の影響を相当減少できるのに反し, 同じ蛋白含量の飼料にもかかわらず蛋白価の低い質の悪い場合は「ストレス」負荷を受けると無負荷群に比し大きな差を示した。
3) 白鼠に対する光の影響は本実験でも明らかな差は認められなかつたが, 飼料の悪いものではある程度「ストレス」の影響が現れた。また光単独では影響が少ないが振動も同時に負荷される場合はその影響は大きく現れた。
4) 寒冷の影響は動物蛋白飼料では殆んど現れなかつたが植物蛋白飼料では「ストレス」負荷群は対照群に比し影響を受け体重増加が少なかつた。
5) 臓器機能に及ぼす「ストレス」負荷の影響は動物蛋白飼料よりも植物蛋白飼料の方に大きく現れた。
6) 栄養組成の差と「ストレス」負荷により心理的影響が如何に現れるかは今回の実験が最初であり今後の継続研究にその結論を俟たねばならないが, 本実験においては飼料差による影響が見られ植物蛋白飼料の場合は動物性蛋白飼料に比し高い潜時の値を得られたことは興味ある問題である。また「ストレス」負荷群が対照群に比べて行動が速い傾向を示すことから,「ストレス」は白鼠の心理に何等かの影響を及ぼすことが想像された。

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