1968 年 26 巻 2 号 p. 98-105
農山村における宿命的な食習慣をうちやぶる家庭レベルにおける栄養指導の手がかりを得る目的で, 愛知県豊田保健所地域内の都会地から遠くはなれた山間農村である小原村部落から代表的標本として抽出した農家42世帯を対象とし, その地区の人々の蛋白質性食品の嗜好傾向についてしらべた。
(1) 小原村の農家における蛋白質性食品の嗜好性には, 男女別においても, 年齢層別においても, 食品群別においても, それぞれかなりの嗜好差がみられることがわかった。
(2) また, その各年齢層および男子, 女子を通じて最も嗜好性の高い品目はたまごであったが, それに反し著しい非嗜好性を示した品目は, 獣鳥肉類および牛乳であった。その非嗜好傾向において小児期の男子および女子, 成・壮年期の女子に著しかった事実は特に注目されねばならないであろう。
したがって, 農村の家庭レベルにおける食生活改善に当たっては, 男女別, 年齢層別などの多層的な嗜好傾向に対する栄養指導が必要であるとともに, 動物性蛋白質給源の生産および流通の面からの指導の重要性が痛感される。