栄養学雑誌
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農家食生活実態調査
石垣 志津子
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1972 年 30 巻 5 号 p. 206-212

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抄録

1. 農家の食生活改善を進めるための指針を得ることを目的として, 農家食生活実態調査を行なった。対象は, 愛知県農村地帯より無作為抽出により2,459戸を選定し, 昭和45年7月実施した。対象農家は尾張と三河の地帯に二分し集計した。
2. 栄養摂取状況は, 全地域, 動物性食品がすべて不足し, 特に牛乳の摂取が非常に少ない。
また, 緑黄やさい類, 果実類, 油類が不足し, このため良質たん白質, 脂肪, カルシウム, ビタミンA, ビタミンB2の不足が目立っていた。
動たん比率は29.4%で少なく, 脂肪も不足しているので, 農村には, 都市とは異なった独自の, 適切な指導を展開すべきである。
3. 食生活に影響を及ぼす炊事時間, 食費, 炊事担当者については, 最近, 主婦の多忙や出稼ぎにより炊事担当が老人に移行しつつあり, 簡単な調理や, 安価な食品が常用されやすく, 生活費中食費にかける割合が少なく, 栄養に対する意識の低調さが食内容を貧困にしているものと思われた。
したがって, これら実態のもつ, 農民の経済観, 労働観から, 正しい栄養観に到達する阻害要因を克服してゆく努力が重ねられなければならぬが, その第一歩として, 農家食生活実態調査をとおして, 対象に動機づけ, 自主的に栄養改善を実行する意識を盛りたてるような努力を, 栄養指導において払うべきである。

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