1978 年 36 巻 5 号 p. 215-224
PCBの毒性発現と飼料中の脂肪の質および量との関係を険討した結果を要約すると次の如くである。
1) 飼料脂肪の種類を変えてPCBを投与した場合, ラードを用いたときに最も成長が悪く, 脂肪レベルを変えた場合でもラード低レベルのときに成長が悪いばかりでなく, 半数以上に死亡がみられ, PCBの毒性が強く現われた。
2) PCBの脂質成分に及ぼす影響では, 血清, 肝臓共に飼料脂肪の種類とレベルにかかわらず, PCB非投与群に比べ, トリグリセライドの減少とリン脂質, コレステロールの増加が認められた。
3) 総脂肪酸量は試験したいずれの油脂でも脂肪レベルの上昇のみならず, PCBの投与により増加した。
4) 個々の脂肪酸ではPCB投与によりステアリン酸および多価不飽和脂肪酸の含量の増加することを認めた。脂肪酸組成ではリン脂質とトリグリセライドの両画分において, PCB投与によりパルチミン酸の割合の減少, ステアリン酸の割合の増加が両油脂を通じて顕著に認められた。
5) 肝臓へのPCBの蓄積は飼料中の脂肪レベルが高い場合に大きいことを認めた。また死亡例のみられたラード低レベル群では生存したものに比べ, 飼育中に死亡したものにおいて高い蓄積を認めた。