栄養学雑誌
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脱落乳歯エナメル質表面の酸溶解性について
奥野 央子武藤 静子
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1979 年 37 巻 3 号 p. 117-127

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抄録

乳歯のう蝕予防の第1要提は, う蝕にかかりにくい歯質の形成にあるという視点に立ち, 歯質評価法の1つとして耐酸性をとりあげ, 奥野が生体内永久歯に用いた乳酸寒天接触法を一部改変して, 新たに脱落した乳歯170本に試みた。その結果を標本数の比較的多かったA+B, A, Bの3群について, そのエナメル質形成期に遭遇した環境諸条件と照合して検討し, 次のような知見を得た。
1) 本実験条件下でのCa溶出量は17.5±5.24μg。溶出量は歯種によって多少異なり, 上顎では, A・D・B・C・E, 下顎ではA・D・B・Cの順に多く, いずれの歯種も上顎より下顎が多かった。また上下の差は臼歯群から切歯群へ移るにつれて順次著しくなった。
2) 本実験条件下でのP溶出量は9.48±2.862μg。上下頚差, 歯種による差はCaの場合とほぼ同じ傾向を示した。
3) CaとPは, ほぼ同一の比率で溶出した (Ca/P値:1.74)。
4) 比較的に標本数の多かったA+B, A, B, の3群について各種条件との関係を検討した結果,
(1) 3群とも健全歯とう歯間, 男女間にCa溶出量の差異は全く見られなかった。
(2) 1・2月生まれは, 7・8月生まれより, またフッ素塗布群は否塗布群より常にCa溶出量の低値を示したが, その差は有意水準に達しなかった。
(3) B群でCa溶出量と出生時身長及び体重とそれぞれ有意の正相関を示した。
(4) 母乳を飲んだ場合は, 人工栄養の場合よりCa溶出量は常に低い値を示したが, その差は有意水準に達しなかった。
(5) 母親の記憶に依った場合, 当該児妊娠中の母体のつわりの有無食欲の良否, 栄養剤服用の有無とCa溶出量には, 一定の関係は見られなかった。

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