栄養学雑誌
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老年者透析食の食事基準に関する研究
菊池 洋子坂本 紀子伊藤 裕子国分 泰子
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1982 年 40 巻 6 号 p. 293-301

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抄録

著者らは, 老年者透析患者の食事管理を検討する目的で, 嗜好調査と栄養素摂取量調査を行った。そしてこの成績を基に, 新たに老年者透析食を策定し, 該当患者に供してきた。
結果は次のとおりであった。
1) 老年者は, 昔から食べなじんでいるあっさりとした和風料理に嗜好が高く, また, 生理的に淡白な物を好む傾向がある。
2) 一般透析食 (1週間の平均給与量, エネルギー2,080kcal, 給与たん白質64g) 供与における老年者の栄養素摂取量は,エネルギー1,480kcal, たん白質51gで, 給与量=摂取量ではなく, 給与量>摂取量であった。
3) 一般透析食の基準エネルギー (2,000kcal) は, 県内健常老年者の摂取量および60歳以上の所要量に比べ, かなり高い。たん白質では, 当院の一般透析食の基準量 (60g) と県内健常老年者の摂取量はほぼ同じで, 60歳以上の所要量との差も少ない。
4) 老年者透析食の食事基準は, エネルギーは一般透析食に比べ, 400kcal低い1,600kcalとする。たん白質は, 一般透析食と同じ60gとする。
5) 老年者透析食は, 次の点を留意する。(1) 和風料理を主体とする。(2) 季節感をいかし, 郷土料理を取り入れる。(3) 必要以上の油や粉あめを使用しない。(4) 軟らかく調理する。
6) 老年者透析食のメリットとしては, (1) 摂食状況の向上により, 各食品群がまんべんなく摂取され, エネルギー, たん白質の増加はもちろんのこと, 各種栄養素, 食事全体のバランスの点でもよい, (2) 昔ながらの食習慣をいかした献立を取り入れることにより, 患者に食の楽しみと満足感を与える, などがあげられる。
7) 老年者透析食の給与エネルギーを400kcal下げたことによっても, 貧血, 高カリウム血症, 高窒素血症などの増悪をみた患者はいなかった。

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