栄養学雑誌
Online ISSN : 1883-7921
Print ISSN : 0021-5147
ISSN-L : 0021-5147
ラットにおけるゲルマニウム含有スピルリナの慢性毒性試験
折茂 英生恩田 圭司可世木 久幸神田 佳和久安 早苗平井 幸彦吉野 芳夫
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 42 巻 1 号 p. 43-49

詳細
抄録

日本スピルリナ (株) の人工培養池において酸化ゲルマニウム添加条件下で生産されたスピルリナの乾燥藻体には1,130ppmのゲルマニウムが含有された。この試料を, NMF飼料に20%の割合で混合したスピルリナ飼料の慢性毒性試験におけるNMF飼料の対照とし, 雌雄 Wistar 系ラットを用いて25週間にわたって実施した。
試験区と対照区の身体状況を比較するため, 飼育期間中には外見的観察および体重, 飼育終了時には血液検査28項目, すなわち白血球数, 赤血球数, ヘモグロビン濃度, ヘマトクリット値, MCV, MCH, MCHC, 血清総たん白, A/G比, 尿素窒素, 尿酸, クレアチニン, 総脂質, 中性脂肪, リン脂質, 総コンステロール, HDLコレステロール, 総ビリルビン, 血清カルシウム, 無機リン, 血清鉄, TIBC, 血清アルカリ性ホスフアターゼ活性, クレアチンキナーゼ活性,γ-グルタミルトランスペプチダーゼ活性, トランスアミナーゼ活性2種 (SGOT, SGPT), ロイシンァミノペプチダーゼ活性を測定すると同時に, 主要臓器11種, すなわち副腎, 脳, 心臓, 下垂体, 腎臓, 肝臓, 肺臓, 脾臓, 胃, 睾丸または卵巣の重量, 外見的所見および病理組織学的検索を実施した。
その結果, 雌雄とも試験区, 対照区の間に大きな差異はなく, 異常と考えられる変化所見を認めなかった。試験区と対照区の間にp<0.01の統計上の差異を認めた項目は, 血液所見, 雄ラットの血清カルシウムおよび血清鉄, 雌ラットの中性脂肪およびクレアチンキナーゼ活性であったが, 文献値と対応した結果, 異常値とは認め難いと思われた。したがって, 本スピルリナ飼料からはこの試験結果からみて, 慢性毒性因子を検出しないものと判断された。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
前の記事 次の記事
feedback
Top