栄養学雑誌
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進行性筋ジストロフィー症 (PMD) 患者のエネルギー所要量に関する研究
PMD患者の基礎代謝について
臼谷 三郎西山 邦隆木田 和幸山内 登苅谷 克俊秋元 義巳森山 明夫
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1984 年 42 巻 4 号 p. 247-254

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抄録

PMD患者のエネルギー所要量を算定する方法を検討するために, その構成要素としてのBMを, 対照患者20人を含めた55人について測定し, 次の結論を得た。
1) 一般入院患者のBMは, 正常範囲に分布する者が多かったのに比べて, PMD患者は低下例が53.1%を占め, 亢進例は6.3%にすぎず, %BMRの平均は基準値の11%減となった。
2) これまでPMD患者のBMは, 基準値と同じか, あるいは亢進するとの報告があるが, これは, 対象患者集団の平均体重偏差値の大小による現象的差異にすぎないことを明らかにした。
3) 体重偏差値 (x) と%BMR (y) との相関分析の結果, 両者間には有意の相関が認められ, 前者に対する後者の回帰直線はy=-0.974x+175.4が成立した。
4) 上記の回帰直線から, 日本人のBM基準値に対応する標準人と, 同一体重を有するPMD患者のBMは, 基準値に比べて低下するので, PMD患者のBMは本質的に低いと理解すべきであろう。
5) PMD患者の肥痩度や Kaup 指数と%BMRとの間には有意の逆相関が認められたが, 機能障害度や血清CPKとの間には明らかな関係は認められなかった。
以上から, CPK患者のるい痩化現象に注目するあまりに, 全てのPMD患者のBMが亢進しているかのような錯覚に基づいて集団栄養や栄養指導を行うことの危険性を指摘し, 個別的対応が不可欠であることを強調して結論とする。

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