栄養学雑誌
Online ISSN : 1883-7921
Print ISSN : 0021-5147
ISSN-L : 0021-5147
勤労長期透析患者の正月行事食に対する栄養指導
勤労長期透析患者の食事管理 (第5報)
松本 恵子奥富 善吉安藤 まち一寸木 宗一
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 43 巻 3 号 p. 143-148

詳細
抄録

昨今における医療技術の進歩, 病態生理の解明は, 透析者の予後を著明に改善させている。よって日常, 食事制限を余儀なくされている透析者が, 冠婚葬祭あるいは正月などの特別食に, いかに対応しているかを知ることも, 栄養指導の一助となるものと考える。今回, 透析者の正月料理の摂取状況および周囲の環境によって, 食生活がいかなる変化を受けるかについて調査し, その結果に基づき栄養指導を行った。
結果を要約すると以下のごとくであった。
1) 日常の基本透析食摂取時, および栄養指導前 (昭和58年正月3が日), あるいは栄養指導後 (昭和59年正月3が日) の各栄養素摂取量について, 1日の平均摂取量を比較した。栄養指導前摂取不足であったエネルギーは, 栄養指導後増加し, また過剰摂取を示したたん白質, 水分, 塩分は制限範囲内に抑えられた。
2) 栄養指導前, 過剰摂取であったたん白質, 塩分, Kの給源となる食品群について検討した。指導前,摂取比率の高かった魚介類およびその加工品が, 指導後漸減し, 基本透析食摂取時に近いパターンが得られた。
3) 基本透析食摂取時のたん白価は73, 第1制限アミノ酸はイソロイシンであり, 栄養指導前および後の値は75, 84, 第1制限アミノ酸はトリプトファンであった。
4) 栄養指導後における正月3が日の生化学的検査値は, 栄養指導前に比較して安定した値が得られ, 正月行事食に対する栄養指導効果が表れる結果を得た。
5) 栄養指導前における透析者の行事食に対する考え方は, 周囲の環境に影響される傾向が見受けられた。しかし指導後は, 基本透析食に準じた食生活状況を示し, 自己管理に対する前向きの姿勢が強くうかがわれた。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
前の記事 次の記事
feedback
Top