栄養学雑誌
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勤労長期透析患者における外食摂取状況の調査
勤労長期透析患者の食事管理 (第6報)
松本 恵子奥富 善吉安藤 まち一寸木 宗一
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1985 年 43 巻 4 号 p. 193-198

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抄録

透析患者の生存率が著明に向上し, 勤労に従事する者も多くなり, したがって職場において外食する機会が増加している。ところが, この外食が透析療法を遂行し, 体調を維持するうえで問題となり, 自己管理に自信を失う要因ともなっている。そこで勤労透析患者の外食摂取状況を調査し, 栄養指導を行うことによりどのような効果がみられるか検討した。すなわち, 昭和57年4月から58年3月までの調査 (栄養指導前) と, 昭和59年8月までの調査 (栄養指導後) を比較したところ, 栄養指導による若干の改善が認められたので報告する。
結果を要約すると以下のとおりである。
1) 栄養指導前では“外食しない”が42.8%であったが, 指導後では66.7%であり, 外食回数が減少する傾向がうかがえた。また栄養指導前における外食の理由は,“楽しみのひとつ”52.4%,“弁当を作るのが煩わしい”33.3%であったが, 指導後では“仕事の都合で仕方なく”71.4%,“楽しみのひとつ”23.8%と変化した。
さらに意識的に避ける料理・食品として栄養指導前では,“めん類”,“生野菜”,“丼物”などであったが, 栄養指導後では“しょうゆ・ソース・その他の調味料”となった。
2) 外食時の鋭敏な味覚, 好まれる味覚については,“鹹味”,“酸味”,“甘味”などであり, そのうち“無回答”が66.6%という高率を示した。
3) アルコール摂取の調査では, 栄養指導前では“飲まない”が52.4%であったが, 栄養指導後では71.4%に増加した。また摂取理由は栄養指導前・後ともに“仕事上のつき台いのたや”が過半融を占めた。
4) 外食時の留意点は栄養指導前・後ともに,“塩分”,“たん白質”摂取に関してであるが, 特に栄養指導後では1日の総摂取量について十分配慮する者が多くなった。また料理を決める動機も栄養指導前の“嗜好に合わせる”から, 栄養指導後では“栄養的な面”へと変化した。

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