栄養学雑誌
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農村婦人の栄養摂取量と血液性状値の季節別変化 (第2報)
季節別血液性状値について
斎藤 憲森 成子吉岡 美子
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1986 年 44 巻 4 号 p. 191-201

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抄録

岩手県胆沢郡金ヶ崎町下永沢地区の農村婦人35名について, 春季 (6月), 夏季 (8月), 秋季 (11月) および冬季 (2月) の4回, Ht, Hb, Total-cho, HDL-cho および動脈硬化指数を測定し, 季節変動を検討した。
さらに, 夏季のHt, Hb値から対象者を貧血者群と正常者群に分け, 体重kg当たりの栄養素等摂取量 (エネルギー, たん白質, 動物性たん白質, 鉄, ビタミンC), 赤血球系諸値 (Ht, Hb) について, 両群間および季節別変動を比較し, 次の結果を得た。
1) 季節差のあった血液諸性状は, Ht, Hb, HDL-cho および動脈硬化指数であった。Ht, Hbは夏季に低下し, HDL-cho は秋季から冬季にかけて高値となり, 動脈硬化指数は低値を示した。
2) 貧血者・正常者群間において, 有意差を認めた栄養素はたん白質のみで, 夏季において正常者群が少ない摂取であった。
3) 貧血者・正常者群別, 季節別栄養素等摂取量は, たん白質, ビタミンCが両群とも冬季において少なかった。
4) 貧血者群の赤血球系諸値は, 季節変動が認められなかったが, どの季節とも正常者群と比較して有意な低値を示した。一方, 正常者群は夏季に低下するが, 秋・冬季は上昇した。
5) 貧血者群の赤血球系諸値が, 農閑期においても低値のままだった要因として, 貧血者群の世帯当たり耕地面積が非貧血者のそれと比べ有意に大きいことがあげられ, 夏季における労働過重がその一因として示唆された。

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