栄養学雑誌
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壮年期男性の健診結果からみた動脈硬化発生のリスク
飲酒頻度からみた脂質及び糖質代謝異常の比較
皆川 智子山田 要子木原 キヨ子菊池 康子鬼原 彰東 貴代増井 秀子菊地 真理正見 秀子
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1990 年 48 巻 3 号 p. 127-133

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抄録

ある国家公務員関連男性職員の退職時健診に際し, 飲酒頻度からみた血中脂質を中心とする血液検査成績の検討を行い, 以下の結果を得た。
1) 高頻度飲酒群ではTC, TG及びLDL-Cは高値の傾向を認め, リポたん白の面でもLDLが低頻度飲酒群と比較し有意の上昇を示し, VLDLもかなりの上昇傾向を示した。しかし, HDL-C及びカイロミクロンは特に差異を認めなかった。
2) 高脂血症の頻度は, 軽度高TC血症あるいは軽度及び中高度高TG血症が高頻度飲酒群に多く, 低HDL-C血症も同様であった。低LDL-C血症は低頻度飲酒群に多く認められた。
3) 血中アポたん白値ではアポBが高頻度飲酒群で有意の高値を示したが, アポA-IIは差異がなく, アポA-Iは高値の傾向を示した。
4) 糖負荷試験の結果からみると, 高頻度飲酒群は低頻度飲酒群と比べて境界型を示す頻度が高かった。
5) 肝機能検査では, γ-GTP及びAl-Paseが高頻度飲酒群で高値の傾向が認められた。
6) 既往症では, 胃腸病, 糖尿病, 肝臓病の頻度は両群で差異がないが, 心臓病, 高血圧症は高頻度飲酒群に多い傾向が認められた。
以上より, 動脈硬化に伴う冠血管疾患や脳血管疾患が漸増している現在, 一般住民に対し特に飲酒行動を中心にした日常生活行動に関する積極的な健康教育がより重要な課題と考えられた。

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© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
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