栄養学雑誌
Online ISSN : 1883-7921
Print ISSN : 0021-5147
ISSN-L : 0021-5147
赤血球中の溶血率及び組織中のトコフェロール量を基準としたトコフェロール誘導体の生理活性
惟村 直公長谷川 忠男鈴木 隆雄
著者情報
キーワード: 赤血球溶血率, 溶血抑制
ジャーナル フリー

1991 年 49 巻 2 号 p. 75-79

詳細
抄録

dl-α-Tocopheryl acrylate 及び dl-α-Tocopheryl crotonate の生理活性を検討した。実験は, 赤血球のジアルル酸による溶血率100%の雄ラットを用い, 誘導体投与後48時間経過した溶血率, 誘導体の144時間にわたる溶血抑制に対する持続力, 更に, 組織中の Tocopherol 分布について行い, 次の結果を得た。
1) 投与後48時間経過した赤血球の溶血率は, dl-α-Tocopheryl acrylate 投与群で95.2%, dl-α-Toocopheryl crotonate 投与群で96.2%と, ほとんど溶血を抑制しなかった。
2) 赤血球の溶血抑制の持続力は, 対照の dl-α-Tocopheryl acetate 投与群で赤血球の溶血抑制率0%になるまで約120時間を要した。これに対し, dl-α-Tocopheryl acrylate 投与群, dl-α-Tocopheryl crotonate 投与群の各群とも, 投与後6時間でそれぞれ最大32.0%, 25.7%の赤血球の溶血抑制率を示し, 約24時間後には0%となった。
3) 組織中の Tocopherol 量は, 赤血球の溶血率の結果を反映しており, 2種類の誘導体投与群とも, 肝臓, 腎臓, 血清で低値を示した。しかし, Tocopheryl acrylate 投与群の睾丸中 Tocopherol 量については, 対照の Tocopheryl acetate 投与群との有意差が認められず類似した値を示した。
以上の結果から, dl-α-Tocopheryl acrylate, dl-α-Tocopheryl crotonate の各誘導体とも, 生体内で加水分解作用を受けにくい化合物であることが示唆された。しかし, Tocopheryl acrylate 投与群の睾丸中 Tocopherol 量については, Tocopheryl acetate 投与群と類似した値を示したことから, その吸収形態については, 更に検討を要する。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
前の記事 次の記事
feedback
Top