栄養学雑誌
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都市生活者の疲労自覚症状と健康及び食生活状況との関連
苫米地 孝之助大木 和子栗原 和美泰磨 正文谷 知明鎌田 豊数清水 盈行三田 禮造山口 功斎藤 芳枝吉原 富子南雲 葉子尾関 幸子西牟田 守橋本 勲小林 修平
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1992 年 50 巻 2 号 p. 69-78

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抄録

東京都世田谷区保健センターを訪れた成人男女297人 (30~79歳, 第1次調査), 及び公務員を中心とした成人男女ボランティア74人 (第2次調査) を対象に, 産業衛生協会の疲労自覚症状訴え数と, 食生活状況及び身体測定値・臨床検査値との関連について検討した。第1次調査の結果,
1) 性別・年齢階級別にみた自覚症状の訴え数は, 一般に女性のほうに多く, また女性は高齢になるにつれて訴え数が増加する傾向がみられた。
2) 自覚症状の群別訴え数の分布をみると, 男性はIII群の訴え (局所的疲労症状) が多く, 女性はI群の訴え (全身的疲労症状) が多かった。男女を通じてみた場合,“目が疲れる”と訴える者が最も多かった。
3) 臨床検査値と疲労自覚症状との関係については, 女性において疲労症状訴え数の多い者に血圧値の高い者 (収縮期血圧≧160mmHgまたは拡張期血圧≧95mmHg) が多かった (p<0.025)。
4) 世田谷区保健センター方式簡易食生活調査票を用いた食生活状況調査の結果, 何らかの食生活上の問題をもっている者とそうでない者, 週1回以上欠食のある者とそうでない者, たん白質摂取量が45g/日以下の者と46g/日以上の者, ビタミンC摂取量が50mg/日未満の者とそれ以上の者, 及び果物・菓子類の摂取が240kcal/日以上の者とそれ未満の者との各々の割合は, 疲労自覚症状訴え項目 (スコア) の多い者が少ない者に比べ, いずれも高い (p<0.05) ことが認められた。
第2次調査の結果,
5) 疲労症状訴え数と各臨床検査値との相関関係をみたところ, I群, III群並びに総訴え数と尿中アドレナリン排泄量との間に有意な相関 (r=0.225~0.355, p<0.01) が認められた。
以上により, 自覚症状訴え数は, 地域住民のような対象集団においても日常の慢性疲労状況を表す指標として有意義であり, 健康にかかわる疲労の危険因子としての役割等の解析手法として有用であるとの示唆を得た。

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