本研究は, 中等度の運動または激運動により引き起こされる汗中へのNa, Kの損失の増大が尿中排泄量の減少によって24時間以内に代償されるか否かを検討するために行われた。5人の健康な男性を被験者とした。13日間の調整期, 安静日, 中等度の運動日, 激運動日の連続する16日間からなる実験を2回にわたって行った。運動は, 中等度の運動日と激運動日の運動期 (9~11時) に60% VO2 maxまたは80% VO2 maxを目標強度として自転車エルゴメーターを用いて40分間実施した。運動期では, 汗・尿中Na排泄量が中等度の運動日と激運動日で安静日よりも有意に高値を示したが, K排泄量は対照日, 中等度の運動日及び激運動日の間で差を示さなかった。一方, 回復期 (11時~翌日9時) では, 尿中Na排泄量が, 中等度の運動日と激運動日で安静日よりも低値を示した。運動期と回復期の両方を含む24時間では, 汗・尿中Na, K排泄量は, 対照日, 中等度の運動日及び激運動日の間で差を示さなかった。
以上のことから, 本実験条件下における運動後翌日までの時点では, 中等度の運動日, 激運動日でともに, 体外へのNaとKの損失はみられないことが示唆された。