栄養学雑誌
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嚥下補助食品としての増粘剤の利便性について
テクスチャー特性及び官能評価からの検討
高橋 智子丸山 彰子大越 ひろ
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1997 年 55 巻 5 号 p. 253-262

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抄録

本研究は, 市販の増粘剤の利用しやすい条件を知る目的で, テクスチャー特性と官能評価の面から検討を行った。増粘剤の添加濃度と硬さの関係, 添加後のテクスチャー特性の経時変化, 溶解する溶液成分のテクスチャー特性への影響について検討した。また, 増粘剤の溶解性及び嗜好性について官能検査による検討を行った。
1) 増粘剤の添加濃度と硬さの関係を求めたところ, でんぷん系の増粘剤が増粘多糖類系の増粘剤と同程度の硬さを得るには2-3倍の添加量が必要となった。
2) でんぷん系の増粘剤は, 増粘多糖類系のものよりも早く安定したテクスチャー特性が得られた。また, 増粘剤の添加濃度が高くなるに従い, 経時変化は大きくなった。
3) ショ糖, 食塩, 及びpHのテクスチャー特性に及ぼす影響を検討したところ, ショ糖溶液に添加した場合はいずれの増粘剤も水に添加したものよりも硬さが増加した。
4) 各増粘剤の主原料の性状が, 大きく溶解性の評価に影響した。
5) 嗜好性の評価は, 増粘多糖類系の増粘剤が他の増粘剤に比べて風味が悪く, 飲み込みにくく, 好ましくないと評価された。これらのことから, 利用する上で増粘剤の風味が, 飲み込みやすさ, 好ましさに大きく影響を与える要因であることが示唆された。従って, 今後の嚥下補助食品としての増粘剤の開発において, 風味のよい増粘剤の開発が期待される。
すなわち, 好ましい増粘剤の条件は, 調製後速やかに安定したテクスチャー特性が得られること, 液状食品に含まれる成分の影響を受けにくく, 風味がよいことといえる。

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© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
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