栄養学雑誌
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糖尿病治療食からのミネラル供給量に及ぼす調理損失の影響
鈴木 和枝鈴木 一正藤波 襄二
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1999 年 57 巻 5 号 p. 295-304

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抄録
入院糖尿病患者に給与されている糖尿病治療食の実測値が計算値を下回る要因を検討するために, 治療食献立の中でも調理操作の頻度が高い, 茹で, 水煮, 浸漬及びおろしの各操作について, 調理損失に関するモデル実験を行った。実験の試料は, 野菜31種類, いも2種類, 乾麺4種類及び魚7種類で, 各試料における調理前後の鉄, 亜鉛, 銅, マグネシウム及びカリウム濃度は, 原子吸光法によって分析し, これから減少率を求めた。加熱調理の茹でと水煮の各操作では, 非加熱の浸漬操作, 特に平板状・大片状に切った野菜の場合に比べて, ミネラルの損失は大きかった。また, 水との接触面積が大きい切り方のものほど, 浸漬操作によるミネラルの損失は大きい傾向がみられた。おろし操作による各元素の平均減少率は14~20%であった。茹で操作の後, 絞り操作を行った場合には, 各元素の平均減少率が26~46%の範囲内で, 上述した各操作の中では最も調理損失が大きかった。元素別の比較では, カリウムは茹で, 水煮及び浸漬の各操作による影響を受けやすいが, 鉄は逆に影響を受けにくく, 元素特性が示された。以上より, 糖尿病治療食の実測値が計算値に比べて低値を示した一因として, 調理損失による影響は大きいとみられた。糖尿病性腎症など, カリウム制限が必要な食事療法では, 調理によるカリウムの損失は好ましい現象であるが, ミネラル供給の観点からは, 調理損失を最小限に留める工夫が重要で, 糖尿病治療食に不足しやすいミネラル, 特にマグネシウム, 鉄, 亜鉛及び銅を供給するためには, 献立・調理上の配慮が必要であるとの結論を得た。鉄については, 実測値が計算値を下回る要因として, 調理損失以外の因子の関与も示唆された。
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