栄養学雑誌
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女子大学生の骨量及びその1年間の変化に影響を及ぼす要因について
料理選択能力及び運動期間との関係
坂本 裕子三好 正満
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2000 年 58 巻 1 号 p. 5-14

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抄録

カルシウム摂取の改善に向けて, 望ましい食事がとれる実践的な食事指導法を検討する目的で, 女子大生を対象に骨量と関連づけた調査を行った。新しい試みとして写真を用いた視覚的イメージによる料理選択能力を調べ, 主菜とともに選択された副菜の合計栄養素等量を算出し, 3日問の食事調査や運動状況とともに, 踵骨骨量とその1年間の変化との関連性を調べ, 次の結果を得た。
1) 3日間の食事調査結果から, カルシウム摂取量は調査両年ともに平均では栄養所要量を満たしておらず, 個人間の偏りが大きく, 牛乳からの摂取割合が高かった。
2) 1996年度のS値とS値の1年間の差は, 食事調査から求めた栄養素等摂取量に対しては有意な関連は認められなかったが, イメージ調査で選択された料理のカルシウム量等との間には正の相関が認められた (p<0.05)。また, S値は大学での運動期間 (p<0.01) と中学校から1996年の調査時までの通算の運動期間 (p<0.05) に, S値の1年間の差は同じ1年間の運動期間との間に有意な正の相関が認められた (p<0.05)。
3) 対象者全員からS値の上下各20パーセンタイルの者を抽出した上位・下位群と, S値の1年間の差に4以上変化のあった者を抽出した上昇・下降群を取り上げたところ, 上位あるいは上昇群で3日間の食事, イメージ調査及び運動期間の項目に高い傾向が認められた。また, S値の上位群のほうが副菜の選択数が多く (p<0.01), 高カルシウム副菜の割合も有意に高かった (p<0.01)。
4) イメージ調査におけるカルシウム摂取量でも, 上位群のほうがS値とS値の1年間の差がともに有意に大きく (p<0.05), 料理選択能力の高い者のほうが骨量も高いことが示唆された。従って, 運動に加えて食事を組み立てるイメージ力を高める食事指導が, 骨量を高めることにも有効であろうと考えられることから, 食材や料理を通して望ましい食事像を描く能力の評価法の信頼性を更に高める一方, その能力を高める食事指導法の開発が望まれる。

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