栄養学雑誌
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家族との同居の有無が女性3世代間での栄養素・食品群摂取量の類似性に及ぼす影響
佐々木 敏辻 とみ子
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2000 年 58 巻 5 号 p. 195-206

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抄録

日本人の栄養素・食品群摂取量に世代差が存在することは広く認められているが, 血縁を有する世代間において, その差及び家族内での相関を, 家族との同居の有無を考慮して検討した報告は少ない。そこで, 愛知県内の短期大学栄養士養成課程に在籍する学生 (173人), その母及び祖母を対象とした食事調査を, 自記式食事歴法質問票を用いて行い, 学生の居住形態が自宅 (母と同居) または独居, かつその母及び祖母からも有効回答が得られた110組について解析を行った。
検討した15栄養素及び14食品群のうち, レチノールとコレステロールを除く13栄養素と菓子類, 卵類, 乳類, 嗜好飲料を除く10食品群の平均摂取量に, 有意な世代差が認められた。学生では, 同居群と別居群で, 炭水化物, たんぱく質, 飽和脂肪酸, コレステロール, 魚介類の平均摂取量に有意差が認められた。世代間で摂取量の相関を検討した結果, 同居群では学生・母間で, 検討したほとんどの栄養素・食品群間で中等度の相関 (相関係数:栄養素=0.30~0.61, 食品群=0.21~0.56) が認められたが, 学生・祖母間 (同じく-0.18~0.59, -0.33~0.65) では栄養素・食品群によって異なり, 一定の傾向は認められなかった。別居群では意味があると考えられる相関は認められなかった。両群間の相関係数の差は, 同居群で相関が高かった栄養素・食品群ほど大きい傾向が認められた。そのうち, 豆類, 魚介類, 野菜で比較的に大きな差が認められた一方, 油脂類, 肉類, 果実類ではほとんど差が認められなかった。栄養素・食品群摂取量に顕著な世代間較差が存在する日本人においても, “同居”や“食事をともにする”ことは, これらの世代間の相関に重要な影響を与えている可能性が示唆された。

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