栄養学雑誌
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雌ラットにおける腎臓中ミネラル濃度, 腎機能及びミネラル出納に及ぼす食餌性リン濃度とリン酸塩の影響
松崎 広志中村 カホル
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2000 年 58 巻 6 号 p. 253-259

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抄録

腎臓中ミネラル濃度, 腎機能及びミネラル出納に及ぼす飼料中リン (P) 濃度とリン酸塩の形態の違いによる影響について検討を行った。被験動物として4週齢のWistar 系雌ラットを用いた。ラットに飼料中P給源としてリン酸二水素ナトリウム (NaH2PO4) とトリポリリン酸ナトリウム (Na5P3O10) の2種類を用い, 飼料中P濃度を約99.7mmol/kg diet とした正常P食と約391mmol/kg diet とした高P食の2段階に調整した飼料を21日間投与した。
腎重量は, 湿重量及び乾燥重量とも高P食投与により有意に高値を示した。高P食投与により, 腎臓中カルシウム (Ca), マグネシウム (Mg) 及びP濃度は有意に高値を示したが, NaH2PO4とNa5P3O10の違いによる影響はみられなかった。クレアチニンクリアランスは, 高P食投与時においてNaH2PO4に比し, Na5P3O10は有意に高値を示した。尿中アルブミン排泄量は, 高P食投与により有意に高値を示したが, NaH2PO4とNa5P3O10の違いによる影響はみられなかった。Caの吸収量と体内保留量は高P食投与による影響はみられなかった。Mgの吸収量と体内保留量は, 高P食投与により有意に低値を示し, Pの吸収量と体内保留量は有意に高値を示した。また, Ca, Mg及びP出納に対して, 投与リン酸塩としてのNaH2PO4とNa5P3O10の違いによる有意な差はみられなかった。
本実験の結果から, 投与リン酸塩としてのNaH2PO4とNa5P3O10の違いは, 腎臓中ミネラル濃度, 腎機能及びミネラル出納に影響を及ぼさないことが示唆された。

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