腎臓中ミネラル濃度, 腎機能及びミネラル出納に及ぼす飼料中リン (P) 濃度とリン酸塩の形態の違いによる影響について検討を行った。被験動物として4週齢のWistar 系雌ラットを用いた。ラットに飼料中P給源としてリン酸二水素ナトリウム (NaH2PO4) とトリポリリン酸ナトリウム (Na5P3O10) の2種類を用い, 飼料中P濃度を約99.7mmol/kg diet とした正常P食と約391mmol/kg diet とした高P食の2段階に調整した飼料を21日間投与した。
腎重量は, 湿重量及び乾燥重量とも高P食投与により有意に高値を示した。高P食投与により, 腎臓中カルシウム (Ca), マグネシウム (Mg) 及びP濃度は有意に高値を示したが, NaH2PO4とNa5P3O10の違いによる影響はみられなかった。クレアチニンクリアランスは, 高P食投与時においてNaH2PO4に比し, Na5P3O10は有意に高値を示した。尿中アルブミン排泄量は, 高P食投与により有意に高値を示したが, NaH2PO4とNa5P3O10の違いによる影響はみられなかった。Caの吸収量と体内保留量は高P食投与による影響はみられなかった。Mgの吸収量と体内保留量は, 高P食投与により有意に低値を示し, Pの吸収量と体内保留量は有意に高値を示した。また, Ca, Mg及びP出納に対して, 投与リン酸塩としてのNaH2PO4とNa5P3O10の違いによる有意な差はみられなかった。
本実験の結果から, 投与リン酸塩としてのNaH2PO4とNa5P3O10の違いは, 腎臓中ミネラル濃度, 腎機能及びミネラル出納に影響を及ぼさないことが示唆された。