栄養学雑誌
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身体活動量に関する質問票の妥当性について
山村 千晶田中 茂穂柏崎 浩
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2002 年 60 巻 6 号 p. 265-276

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抄録

これまで, 身体活動に関する質問票の妥当性の検討には, 主要な2点の方法が用いられてきた。第1は, 実際の身体活動と関連のある間接的な測定値との関係であり, 第2は, 直接的な身体活動量の測定値との関係である。
前者としては, VO2maxなどを指標とする呼吸循環系機能や身体組成などとの関係が検討されてきた。特に, 呼吸循環系機能は, 低強度の活動より高強度の活動において有意な関係が見られる傾向があった。
一方, 後者の直接的な評価方法としては, DLW法あるいは加速度計などによって評価されたTEE (kcal/day) や活動量 (MET・min/day) と質問票によって推定したTEEや得点との関係が検討されてきた。質問票が評価しようとするのは, 本来, 1日にどれだけのエネルギーを消費したかということよりもむしろ, 個人の相対的な身体活動レベルを評価するものである。そのため, 妥当性の検討をする際, DLW法で評価したTEEとの関係を検討するよりも, PALあるいはBMRで調整したTEEなどとの関係を検討することが適切であると考えられる。こうすることにより, 身体活動レベルを身体の大きさを考慮したうえで比較できる。
身体活動量を評価する質問票によって推定されたエネルギー消費量と実測値との差が生じる原因として, 特記すべきは, BMRと各活動に対する文献値である。BMRの算出には, 実測値, 様々な推定式を用いた推定値あるいはMET換算値が用いられるが, いずれの研究報告においても, 実測値を使用した際, 最もTEEの推定精度が優れていたことを示している。しかし, 質問票が利用される場面は, 常にBMRの実測が可能であるとは限らない。そこで, 様々な推定式あるいはMET換算値が用いられるものの, BMRの推定式を用いる場合, その推定精度は対象の身体組成に依存する。一方, MET換算値を適切に利用するためには, より多くの仮定問題を考慮しなければならない。例えば, MET換算値は, 性別あるいは様々な年齢や身体組成を有する対象者に対して一律の値 (1kcal/kg body w/h) を当てはめることに限界があることが指摘されている。また, 各活動時に対する文献値についても同様に, 様々な年齢や身体組成を有する被験者に対して一律の値を当てはめること, あるいは, 複数の活動が連続・反復している場合の評価や活動後の代謝亢進をはじめとする他の活動の影響などの問題が挙げられる。
このように身体活動量を評価する質問紙法には限界があるものの, 人の健康問題を考えるうえで, 身体活動量の調査は重要である。これまでにも指摘されてきたように, 質問票によって日常の身体活動量を丸ごと量的に評価すると同時に, 身体活動の内容・パターンなど質的な情報を活用することが必要である。今後は, 様々なライフスタイルを反映するような質問票の開発やそれらのDLW法を用いた妥当性について, さらに検討を進める必要がある。

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