栄養学雑誌
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保育所給食における食物アレルギーに対する対応と除去食実施に関する研究
瀬川 和史山本 由喜子
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2005 年 63 巻 1 号 p. 13-20

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抄録

大阪市内の保育所における食物アレルギーへの対応状況, 除去食実施の状況を調べ, 保育所での除去食実施上の困難や問題点を検討した結果, 以下のことが明らかになった。
1) 大阪市内の保育所給食では食物アレルギー児に対する除去食や代替食品による対応の普及が高い水準にあったが, 一部に不十分な対応もみられた。また, 食物アレルギー児や除去食対応児は, 園児数が少ない保育所で高率であることが示された。
2) 除去食の開始に医師の了解を必要とする保育所は70.7%と高い割合であった。しかし, 保護者や保育士の申し出により開始している保育所もあり, 医師の指示のもとに除去食を開始することをさらに徹底させる必要性があると考えられた。
3) 食品別では卵と牛乳の除去が特に多かった。卵の除去は低年齢で高い割合であるが高年齢で減少した。そば, 果物, 種実などの除去は高年齢になるにつれて増加し, 高年齢で除去食品の構成が複雑化することが示された。
4) 除去食品の組み合わせでは, 3種類の除去が8.4%, 4種類以上の除去が6.6%で, 複雑な除去食に対応している状況が示された。2種類以上の組み合わせでは卵と牛乳の除去が特に多く, 除去に際しては十分な栄養面での配慮が必要であると考えられた。
5) 食品除去の困難さは, 素材食品そのものよりもそれを加工・調理したものの方がより大きく, 特に醤油などの大豆を使った調味料の除去が最も困難であることが示された。また, 除去食実施上の困難さは, 園児が受け入れやすい外観を確保する, といった心理的配慮の面で困難さが大きいことが示された。また, その困難さは, 除去食対応児のより多い保育所が少ない保育所よりも, より強く感じていることが示された。
6) 除去食実施の担当者は調理員が主要な担い手であることが示され, 除去食の準備に必要な専門知識を持った栄養士がより多く配置されて, 保育所給食に対応することが望まれた。

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