映像学
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論文
玩具映画産業の実態とその多様性
ライオン、ハグルマ、孔雀、キング、朝日活動、大毎キノグラフ
福島 可奈子
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2019 年 101 巻 p. 134-154

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抄録

【要旨】
 玩具映画産業の実態とその多様性について、大正末から昭和15年頃までの玩具映画全盛期の業界大手6 社の業態とその傾向性の差異を、玩具映写機やフィルムなどの史料分析により実証的に論じる。
 玩具映画とは、戦前を中心に存在した子供用35㎜フィルムと家庭用映写機のことである。玩具映画ブランドには「ライオン」「ハグルマ」「孔雀」「キング」「朝日活動」「大毎キノグラフ」などがあるが、先行研究でブランド名などは知られていてもその業態は未解明であった。また玩具映画はフィルムの二次利用で映画産業の派生的領域をなしたが、従来各社の具体的相違についても未知であった。本稿は、系統学的方法から逸脱する短命メディアを「分散状態の空間」として「アルシーヴ化」するメディア考古学の視座から、東西玩具映画各社の流通・販売戦略を対比的に分析し、日本の映画産業の知られざる多様性の一端を明らかにする。なぜなら玩具映画は、劇場用映画を解体的に二次利用することで、映画の専門家ではなく、玩具会社や享受した子供までが映像を脱構築して無数のヴァリエーションを生み、他に例をみない拡がりをみせたからである。従来の映画史からすればそれは「断片」であり消滅した「雑多なもの」ではあるが、映像文化全体からみれば、日本の玩具映画とその産業形態のヴァリエーションはきわめて重要な存在であるといえる。

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© 2019 日本映像学会
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