映像学
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論文
「影」の再発見――鷹野隆大の〈影シリーズ〉を中心に
顧 夢てい
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2024 年 111 巻 p. 136-156

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抄録

「モノクロ写真」展(2012)以降、「影」は鷹野隆大の作品の新たな中心の一つになる。本稿の目的は「影」を主題とする作品群〈影シリーズ〉の特性、およびそれが鷹野の創作にもたらす変容を明らかにすることである。そのために、個々の作品の分析とシリーズ全体における位置づけの作業を行う。

震災がもたらした戸惑いのなかで、鷹野は彼自身の影の存在に気づいた。この身体的な経験をきっかけに、彼は「影」そのもの、あるいは「影」のように輪郭がボケている写真を意識的に撮り始めた。その後、鷹野の「影」に対する関心は「影」が持つ現実のなかの“光の欠落”とモノクロのネガ・フィルムの上の“銀の欠落”に移行した。この二重の物質的な“欠落”は、彼が制作に用いるスナップショット、インスタレーション、フォトグラムなどの手法にも反映されている。

〈影シリーズ〉における写真の物質性に対する重視とメディアの複合性は、ロザリンド・クラウスが定義したポストメディウムの特性を示す。近年、ポストメディウムとしての写真が理論的な対象として再発見されつつある情況において、鷹野の実験的な制作方法は、ポストメディウムとしての写真の実践的な側面における可能性を提示したと評価できる。彼は「影」を反復して再発見しつつ、二重の物質的な“欠落”を作品に取り込むことによって、写真という何かが写っているメディウムを、何かが“欠落”しているメディウムとして再発明した。

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