2016 年 11 巻 1 号 p. 99-118
ゲーテッドコミュニティとは公共アクセスが制限された隔離住宅地で,塀などの障壁に囲まれ,門によって出入りが管理される.アメリカ合衆国では,近年,ゲーテッドコミュニティが増加し,多分野から関心が集まっている.地理学研究者は,地域の枠組みにおいてゲーテッドコミュニティを解釈し,研究手段として地図を用いる.本報告はロサンゼルス大都市圏オレンジ郡中部を事例として取り上げ,現地調査に基づいて117か所のゲーテッドコミュニティを確認し,土地利用図を作成した.そして,住宅タイプ,門番小屋,共有レクレーション施設に着目して3分類し,地図化した.ゲーテッドコミュニティの形態と分布には地域差が確認され,白人富裕層が多い地域で,1990年代後半から新規住宅地開発が進行する過程で増加した.こうした調査と地図化の作業を蓄積することにより,モザイク状に分断されたロサンゼルス大都市圏の全体像を把握することができる.